印刷用語「ノビ」
「ノビ」
- A4ノビやA3ノビって何? -
「ノビ」と聞くと、「伸びる」という現象をイメージしがちですが、印刷業界でいう「ノビ」は、「定型サイズ(A4やA3など)よりも、縦横が数ミリ~数センチ大きい紙のサイズ」を指します。
では、なぜわざわざ「ノビ」のある紙を使う必要があるのでしょうか? その理由は、主に以下の3つの工程と品質に関わってきます。
「トンボ」と「塗り足し」のために必要
印刷物を制作する上で、最も重要な要素の一つが「トンボ」と「塗り足し」です。
トンボ(トリムマーク)
これは、印刷物の仕上がりサイズを示す目印であり、裁断位置を示す線です。デザインデータ上に配置されます。
塗り足し(裁ち落とし)
印刷物の端まで色や写真を入れたい場合、仕上がりサイズぴったりにデザインすると、裁断時にわずかなズレが生じただけで、紙の白地が見えてしまうことがあります。これを防ぐために、仕上がりサイズよりも外側へ3mm程度の余分な色や写真をはみ出させておくのが「塗り足し」です。
「ノビ」サイズの紙は、この「トンボ」や「塗り足し」を紙の中に収めるために必要となります。仕上がりサイズぴったりの紙では、これらの情報が紙の外にはみ出てしまい、正確な印刷や裁断ができなくなってしまうのです。
印刷機の構造上必要
印刷は、高速で大量の紙にインキを転写する非常に精密な作業ですが、その構造上、以下の理由から「ノビ」が必要になります。
用紙の給紙ズレ
印刷機内で紙を搬送する際、紙が斜めになったり、印字位置がずれないよう、印刷機の中で紙を押さえる部分(クワエしろなどと呼ばれます)が必要になります。この紙を押さえる部分は、仕上がり位置より外側にあるため、その分の余白が「ノビ」として必要になります。
印刷機の特性
オンデマンド印刷などのレーザー印刷機では、用紙からはみ出た部分のトナーを定着させることが機械の構造上できない場合があります。そのため、端まで印刷したい場合でも、安全な余白(ノビ)が必要となり、その外側が裁ち落とされます。
もし仕上がりサイズぴったりの紙を使っていたら、こうしたわずかなズレや機械的な制約によって、意図しない部分が欠けてしまったり、余白ができてしまったりするリスクが高まります。
裁断工程での「遊び」と「精度」を確保するため!
印刷が終わった紙は、最後に正確なサイズに裁断されます。この裁断工程でも「ノビ」が重要な役割を果たします。
裁断機の特性
裁断機は非常に精密ですが、何百、何千枚もの紙を一気に裁断するため、一枚一枚に完璧に同じ位置で刃を入れるのは困難です。わずかな誤差が生じる可能性があります。
断裁時の刃の「遊び」
刃が紙を切る際に、圧力によって紙がわずかに動くことがあります。
「ノビ」があることで、裁断時に多少の誤差が生じても、デザインの重要な部分を傷つけることなく、意図した仕上がりサイズに正確に断裁することができます。裁断後の切り口もより綺麗に仕上がります。
– まとめ:「ノビ」は高品質な印刷物の土台! –
このように、「ノビ」という紙のサイズは、単に紙が大きいだけでなく、「デザインデータの正確な配置(トンボ・塗り足し)」「印刷工程での機械的な要件とズレの許容」「最終的な裁断精度と美しさ」これら全てを実現するために不可欠な要素です。
「ノビ」は、お客様がお手元に取る美しい印刷物が、多くの工程を経て高い品質で仕上がるための、縁の下の力持ちのような存在なのです。
もし印刷物をご依頼の際に「ノビ付きで」といった言葉が出てきても、それは品質を保つための大切な工夫だとご理解いただけると幸いです。
印刷に関するご不明な点がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください!
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